ステップ14 税歴表という代物
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調査の2大目標の3者確認
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同じ税務調査官が同じ会社を調査することは、まずありません。これは癒着を防止するためでもあるのですが、ということは、税務調査に来る調査官は常に初めて見る会社を調査することになります。そのため税務署では、税歴表という引き継ぎ書が存在するのです。単に現在進行中の追加税額を減らすことにだけ注力するのでは、次の税務調査で大変な目に遭うかもしれませんよ。
調査の2大目標
税務調査における2大目標は、ズバリ次の2つです。 社長、経理担当者、税理士の3者でしっかり確認しておきましょう。
1. 限りなく追加税額を減らす
2. 税務調査官に真面目な納税者であるという印象をもってもらう
申告納税方式を採用している法人税・消費税においては、適正に申告しているつもりでも、 単純な処理のミスや 税務署との見解の相違により、追徴税額が発生することがあります。この場合は、先方の指摘事項が全部出揃ってから、追加税額を減らすための交渉を粘り強く行います。
金額が少額で重要でないミスについては、今回は指導で終わってもらう交渉も必要です。
【交渉におけるテクニック】
□ 指摘事項が全部出揃ってから交渉する
□ 今後の是正で許してもらう
□ 過去の修正ではなく、進行年度の受入としてもらう
□ 修正年度を絞る
□ 修正項目を絞る
↓
資金繰りを悪化させないためにも、粘り強く交渉をしましょう。
好印象は今後にプラス
1の「限りなく追加税額を減らす」ことを過去に経営の対する精算と捉えた場合、2の「税務調査官に真面目な納税者であるという印象をもってもらう」ことは、 今回および今後の調査に影響を与える ものと捉えることができます。税務署は、納税者ごとに 「税歴表」 で管理しています。税歴表とは、過去の調査での指摘・指導事項や決算書類では把握できない部分などが記載されている税務署の内部資料です。
例えば、過去の調査で重加算税の対象(悪質と判断された否認項目)があった場合でも、今回の調査では適正に処理され、是認(修正はなし)となったときは、調査官の心象はよくなっていると思われます。
税金に真面目に取り組んでいる印象を持ってもらうことは、今後の調査回数が減ることもあり、会社にとって有益となります。
【税務署 ⇒ 納税者を3区分管理】
・申告・納税が良好な法人
・過去に不正があった法人、重点業種法人など
・どちらにも属さない法人
【参考】
○約300万社のうち、調査対象は約4.9%の15万社(平成20事務年度)
○事案に応じたメリハリのある調査の推進
○大口・悪質な納税者には、深度のある調査を実施
○資料情報等から計算ミス等が明らかな場合は軽度の接触を実施
〇大阪国税局発表による「平成20事務年度中小法人の調査結果」
⇒不正発見割合の高い上位10業種
⇒パチンコ、廃棄物処理、土木工事、金属打抜き、プレス加工、一般土木建築工事、自動車修理、建売、土地売買、不動産代理仲介、職別土木建築工事、貨物自動車