名義預金は最重要ターゲット
相続税の申告が必要な方は4.4%
国税庁から毎年相続税の申告状況について公表されています。
平成26年中に亡くなられた方(被相続人数)は約127万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約56,000人で、課税割合は4.4%となっています。
亡くなられた方100人中4.4人が相続税の申告が必要な方というわけです。
なお、平成27年1月1日以降に亡くなられた方については、相続税の基礎控除が4割縮小されましたので、これは改正前最後のデータです。
平成27年分はまだ公表されておりませんが、基礎控除縮小に伴い、相続税の申告が必要な方が増えていると推測します。
また、被相続人1人当たりの平均課税価格は2億407万円で、平均税額は2,473万円となっています。
ちなみに相続税の課税価格とは、相続財産価額に相続時精算課税適用財産価額を加え、被相続人の債務・葬式費用を控除し、さらに相続開始前3年以内の被相続人から相続人等への生前贈与財産を加えたものです(相続税の基礎控除額を控除する前の金額です)。
相続財産の金額の推移
相続財産のうち、土地と有価証券と現預金等の金額の推移を10年ごとに見てみましょう。
(平成6年)
土地112,547億円、有価証券13,199億円、現預金等15,002億円
(平成16年)
土地58,298億円、有価証券12,496億円、現預金等21,770億円
(平成26年)
土地51,469億円、有価証券18,966億円、現預金等33,054億円
土地については価格が下落しているため、相続財産の金額も下がっています。
注目は現預金等の金額が倍以上になっている点です。
平成26年分における相続財産の金額の構成比では、土地41.5%、有価証券15.3%、現預金等26.6%となっており、有価証券と現預金等で全体の41.9%も占めています。
相続財産における現預金の割合が年々増加していますが、相続税の税務調査による申告漏れ財産ナンバーワンも「現預金等」です。
申告漏れ財産ナンバーワンは「現預金等」
平成26事務年度(平成26年7月~平成27年6月)に実施された税務調査における申告漏れ課税財産は83億900万円で、実地調査1件当たり2,672万円になっています。
その内訳は、現預金等の33億200万円が最も多く、続いて土地13億7,700万円、有価証券6億6,200万円の順となっています。
やはり現預金等は、脱税に利用されやすい手口のようです。
新聞等で報道される悪質な事案だけでなく、一般的な家庭に来られる税務調査官も、現預金等に注目しています。
預金には名義がありますが、税務調査官は「名義預金」を最重要ターゲットとしています。
国税庁「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集(平成28年分用)においても、名義預金が取り挙げられています。
例えば、父の死亡に伴い父の自宅の金庫を確認したところ、息子名義の定期預金証書が見つかった場合。
この定期預金は父の収入から預けられたもので、父が証書と印鑑を保管運用しており、息子はこの定期預金について贈与を受けたことがないケースでは、名義にかかわらず被相続人の財産と認められ相続税の課税対象となります。
贈与を受けた認識があるケースにおいても、名義預金と誤認される場合もありますので、事前に税理士に相談されるといいでしょう。
この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
2016.7.25執筆
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。