税務調査改正の影響!-4
-
税務調査の改正が中小企業経営者・経理担当者にどんな影響を与えますか?-4
-
『新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき』には、再調査の可能性があります。つまり、税務調査が終わったからといって書類を捨ててしまわないようにしてください。
税務調査が終わったら書類捨てていいですか?
前回からの続きです。
通常の税務調査で有れば、過去3期分みられることが多いと思います。
税務調査が終わると、その調査された過去年分の書類は破棄していいのでしょうか。
決算関係の書類はおおまかには7年間の保存が必要です。
しかし、税務調査が終わり、それら過去年分についての書類を会社で他に使用する機会がないのであれば、捨ててもいいのでは?と考えることもできます。
実際、税務調査後に中小企業経営者や経理担当者の方から、このような質問をよく受けてきました。
再調査の可能性を探る
このことを更に考えると、一度税務調査があれば、それら過去年分については、今後再び税務調査が行われることが無いのか?という疑問にもつながります。
これに対して、前回ご紹介した「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」では、「ある税目・課税期間について調査を行った場合には、調査の結果、更正決定等をすべきと認められなかったか否かにかかわらず、原則として、その税目・課税期間について再度の調査を実施することはありません。」とあります。
では、再調査はないのかというと、次にただし書きがあり、「ただし、例えば、調査終了後に行われた取引先の税務調査で、当初の調査の際には把握されていなかった非違があることが明らかになった場合のように、法令上定められている『新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき』との要件に該当する場合は、既に調査の対象となった税目・課税期間であっても再調査を実施することがあります。」とあります。
つまり、 『新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき』には、再調査は有りうる とのことです。
平成23年改正前であれば、実務的に実際は、一度税務調査が行われた税目及び課税期間については、再調査はほぼなかったと思われます。 それがこの度の「税務調査手続について従来の運用上の取扱いを法令上明確化」の動きから、新たに得られた情報に照らして非違があると認めるときには再調査が有りと明確に記載されました。
ということで、再調査の可能性が有るからという理由だけではありませんが、冒頭の「税務調査が終わったら書類捨てていいですか?」に対しては、「ノー」というアンサーになります。
新たに得られた情報とは?
では、新たに得られた情報とはどんなケースを想定しているのでしょうか。
基本的には、前回調査後に得られた情報ということですが、情報公開法で開示された国税庁課税総括課による「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)【共通】平成24年11月」によると、下記となります。
①納税義務者の申告に関する情報
・申告の有無及び申告がある場合の申告の内容(例:申告書、添付書類、申告事績に基づく税務分析結果、勘定科目の個別検討結果等)
②資料情報
・各種法定調書 ・協力依頼に基づき任意に提出された資料情報
・部外情報(例:投書、インターネットの掲示板への書込み、メールや電話による情報提供等)
・マスコミ情報(例:新聞、テレビ、雑誌、広報誌、フリーペーパー等)
・地方公共団体等から協力要請に基づき提供された資料情報(例:課税通報、住民票の写し、戸籍謄本・抄本、登記事項証明書等)
③その他の情報
・調査着手時に自ら把握した情報(事前通知事項以外の事項に係る調査を再調査として行う場合に限る。)
・内観・外観調査により把握した情報
・他部門の調査により把握した情報
・納税義務者等に依頼した「お尋ね」の回答内容
・他部門で保有している情報
・法令適用の判断についての上級機関(庁・局)への照会に対する見解(例:調査中にその取扱いについて上級機関(庁・局)へ照会しており事実関係を整理して結論を得るのに時間がかかるなどの理由により調査を一旦終了し後日見解が示された場合)
・租税条約に基づく情報交換により得られた情報
④上記情報に加えて非違の存在の客観性を高める情報として、業種・業態情報
・各業種、業態特有の不正手口の傾向、取引慣行等
・景況分析結果(業種別・地域別)
・各種統計資料
例えば、 投書・メール・電話・インターネットの掲示板への書込み、時にはマスコミ情報から再調査 が行われる可能性があるということです。
再調査の理由は教えてくれるの?
再調査は仕方がないと受け入れても、その理由ぐらいはちゃんと教えてくれるのでしょうね、と納税者としては思うかもしれません。
この疑問に対しては、通常の税務調査でもそうなのですが、調査の目的は言ってくれるのですが、調査の理由(再調査も同様)説明は税務調査官に義務付けられていません。
ではでは、再調査も仕方がないと受け入れて、更にその再調査理由の説明がないことも受け入れたとして、情報誤り等で再調査しても何も出てこなかったら責任とってくれるのでしょうね?と納税者としては思うかもしれません。
この疑問に対しては、上記のFAQでは、「再調査の結果として必ず非違が発見されることを再調査の実施のための要件としているものではないため、必要な判断を適切に実施している限りにおいては、訴訟において、手続瑕疵(違反)と判断されることにはならないと考えられます。」とあります。
新税務調査が始まって、いくつかの実務的な変更点や注意点がありますが、この再調査規定の明文化が行われたことによって、もしかしたら、今後は一度実施された税務調査対象税目・課税期間についても、(特にもめた場合には)積極的に再調査を行われることになるのかもしれません。
次回に続きます。
2014.6.4執筆
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。